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医療機器の「耐用年数」とは?減価償却のメリット、「耐用期間」との違いを解説!
更新日:2024年06月19日
高額な費用負担が必要となる医療機器。導入にあたって、使用できる期間、経費計上の方法などに悩まれる方は多いのではないでしょうか。また申告手続きにあたって、税理士から耐用年数や減価償却について問い合わせを受けることもあります。
そこでこの記事では独立開業を検討される方向けに医療機器の耐用年数や会計上知っておくべき減価償却の基本について詳しく解説します。耐用年数とよく似た「耐用期間」「保証期間」についてもあわせてご紹介しますので、ぜひご活用ください。
医療機器の「耐用年数」とは?
クリニックに必要な医療機器は会計上、事業に使われる「固定資産」として計上されます。固定資産とは、長期間にわたって使用する目的で保有する資産のことで、税法上、資産を使用できる「期間」が決められています。この定められた「期間」を「耐用年数」と言います。この「耐用年数」は税法上のルールであり、「医療機器が使える期間」を指すわけではない点に注意しておきましょう。
資産としての医療機器の価値は、使い続けるうちに下がっていきます。そこで、耐用年数に合わせ、価値が減少した分を費用として計上する減価償却を行います。資産の費用を分散して計上する減価償却を活用すれば、税負担の軽減や経営の安定化を図るなどの効果を得ることも可能です。減価償却のさまざまなメリットに関しては、後ほど詳しく解説します。
国税庁が定める医療機器の耐用年数一覧
医療機器の耐用年数は税法上、『財務省の減価償却資産の耐用年数等に関する省令』によって、次のように定められています。
医療機器 | 細目 | 耐用年数 |
---|---|---|
消毒殺菌用機器 | 4年 | |
手術機器 | 5年 | |
血液透析又は血しょう交換用機器 | 7年 | |
ハバードタンクその他の作動部分を有する機能 | ─ | |
回復訓練機器 | 6年 | |
調剤機器 | 6年 | |
歯科診療用ユニット | 7年 | |
光学検査機器 | ファイバースコープ | 6年 |
その他のもの | 8年 | |
レントゲンその他の電子装置を使用する機器 | 移動式のもの、救急医療用のもの | ─ |
自動血液分析器 | 4年 | |
その他のもの | 6年 | |
その他のもの | 陶磁器製・ガラス製のもの | 3年 |
主として金属製のもの | 10年 | |
その他のもの | 5年 |
(出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数」)
先ほどお伝えした通り、耐用年数はあくまで会計に関する数字です。期間を過ぎたらすぐに使用不可になるわけではなく、期間内であれば「故障しない」ということでもありません。
医療機器の減価償却のメリットは?
減価償却の仕組みはわかりづらく、理解するのが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。わかりやすくお伝えすると「医療機器(資産)を購入したその時点ですべて経費にせず、毎年少しずつ費用として計上しよう」というのが減価償却の基本です。
500万円の医療機器を例に挙げて考えてみましょう。購入年に一回だけ経費計上すると、その年だけ経費が増えることになります。実際は翌年、さらに翌年と使用する医療機器であるにもかかわらず、以降経費は発生しないのです。減価償却を行えば、適正な会計のもと、正確な経営の状態を把握でき、節税面でのメリットも得られます。
資産評価としてのメリット
購入した医療機器は、クリニックの「固定資産」と見なされます。決算時には保有資産として、一定の評価のもと、貸借対照表に記載しなければなりません。しかし医療機器は使うほど価値が減っていきます。減価償却を活用すれば、減少した機器の価値を「減価償却分」として差し引けます。
500万円で購入した医療機器の耐用年数5年だとすると、毎年500÷5=100万円ずつ経費計上します。つまり帳簿の上では、機器の資産評価は年を経て400万円、300万円…と年々資産価値が減少していきます。価値の減少を費用として差し引くことで、財務状況が的確に示されます。適切な損益が把握できるため、正確な資産評価が可能です。
キャッシュフロー上のメリット
減価償却では、会計上の「費用」が発生するものの、実際にお金を払う「支出」とは異なります。帳簿上の処理となるため、クリニックの資産は残っている状態になります。キャッシュフロー的なメリットも大きいです。
例えば500万円の医療機器を購入したクリニックが、機器を使って150万円の売上を上げていた場合、減価償却費用が100万円発生します。150-100=50、つまり50万円の利益となります。しかし100万円はあくまで帳簿上での経費計上ですから、手元には100 + 50=150万円が残る計算となります。減価償却で毎年費用計上するため、購入時の500万円を少しずつ回収していると見ることもできます。
耐用年数が過ぎても医療機器は使える?
耐用年数は言葉の持つ意味から、医療機器の使用期限と誤解される場合があります。あくまで税法上のルールであり、減価償却が行える期間を指します。医療機器自体の寿命や使用期限とは異なる点に注意が必要です。使用環境やメンテナンス状況によるものの、耐用年数が経過しても十分に使用できる医療機器がほとんどです。医療機器の使用期限については、次の2ワードが使われます。それぞれ解説します。
「耐用期間」とは
医療機器が十分に機能し続けることができる期間を「耐用期間」と言います。安全性が求められる医療機器は、長期間の使用を想定し、次のような「耐用期間」が定められています。
“医療機器を標準的に使用・保守を行い、修理を繰り返した上で、機器の信頼性、安全性が目標値を維持できなくなると予想される耐用寿命” (厚労省)
医療機器の各メーカーは、上記の定義を基本としそれぞれ「耐用期間」を設定しています。メーカーごとの耐用期間は、添付文書や取扱説明書に記載されていますので一度確認してみましょう。医療機器の耐用年数は4〜7年の場合がほとんどで、耐用期間も約5年前後となっています。そのため、耐用年数とほぼ同じ程度の期間が設定されているケースが多くなっています。また耐用期間はあくまで使用の目安に過ぎず、期間を経過後、すぐに使えなくなるわけではありません。
「保証期間」とは
医療機器の使用に際しては、「保証期間」も定められています。メーカーが製品の品質や性能を保証する期間のことです。この期間内に発生した製品の故障や不具合であれば、標準的な使用・保守を行っていた場合に限り、無償でメンテナンスや交換を依頼できます。保証期間は、医療機器の取扱説明書や添付文書に明記されています。購入時には必ず確認することが重要です。
「保証期間は」先に挙げた「耐用期間」と混同されがちですが、考え方は大きく異なります。耐用期間は医療機器を安全に使用できる期間であり、安全性や信頼性にも関わってくるからです。保証期間とはまったく別のものであると理解しておきましょう。
減価償却が終わった医療機器は、買い替え検討もあり
医療機器の耐用年数と減価償却、また安全に使用可能な期間の目安についてご紹介してきました。では、耐用年数を経過した医療機器は、どのような扱いになるのでしょうか。耐用年数が過ぎた医療機器は、会計上の減価償却も終わることになります。つまり、資産の減価償却費の計上がなくなり、その価値がゼロとなるわけで、キャッシュフロー上の利点はなくなります。
とはいえ、医療機器としてはまだまだ活用できるケースも多くあります。現在使用している医療機器を売却し、新たな機器の購入資金に充てるのも一案です。医療機器を購入する際には、減価償却の対象となる耐用年数と、機器が適切に機能する期間である耐用期間の理解が欠かせません。それぞれを理解して上手く活用すれば、医療機器の資産価値を最大限かつ効果的に利用することも可能になります。
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