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医療機器を購入・売却したい人が知っておくべき販売業者の法的許可制度
更新日:2024年10月28日
体温計や包帯といった身近なものから、手術で使うメス、病院にある大きな検査機器まで、医療機器の種類は多岐にわたります。医療機器の流通を支えるのが「医療機器販売業者」です。 国内から海外まで幅広い製品を扱い、製造・販売や貸与といった形で医療機関に提供しています。
ただ医療機器は、私たちの健康や生命に大きく関係するもの。厳しいルールのもと、国が定めた許認可制度をクリアしなければ製造・販売などに携わることはできません。だからこそ、医療機器販売業者を選ぶ際には、信頼できる業者を見極めることが重要になります。この記事では医療機器販売業者に必要な要件・資格、安心できる業者選びのポイントについて解説します。
医療機器販売業を行う上での要件と基準
健康や生命に関わる医療機器には、品質や有効性、安全性の担保が求められます。国や都道府県が、医療機器の品質や安全性を厳しくチェックしており、医療機器販売業を営む業者には法律で定められた要件を満たす必要があります。
医療機器を市場に出した後も、安全性に関する情報を収集・分析する体制を整え、問題が発生した場合であっても、迅速かつ適切な対応が取れるなど「機器を扱う企業の責任」体制が問われます。当然ながら性能、安全性等の面で問題がない点についても申請、承認が必要です。さらに国内外それぞれの場合において、管理体制の審査もあります。
つまり医療機器販売業は、誰もが手がけられるわけではありません。基準を満たした場合にのみ販売の許可が与えられるものなのです。
医療機器販売業者が担う責任
医療機器は使い方によっては大きな危険を伴います。そのため、医療機器を販売する場合にも「安全に正しく使ってもらえる相手」を選ばなければなりません。同じく、法律を理解し、医療機器を安全に扱える相手を選ぶことも重要です。医療機器販売会社は、人々の健康と安全を守るために「販売」そのものに大きな責任を担っていると言えるでしょう。
また昨今は、医療機器が高騰し、中古の医療機器にも注目が集まっています。初期費用を抑え、環境負荷軽減にも貢献できるなどメリットも多い中古医療機器ですが、品質や安全性、法令遵守の確認は必須です。中古医療機器の購入を検討されている方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。
資格取得のための基礎講習と研修
医療機器を販売するにはいくつかの資格要件を満たす必要があります。特に医療機器の中でも慎重な取り扱いが求められる高度管理医療機器や特定管理医療機器では、営業所ごとの管理者設置が義務付けられています。管理者の資格を取得するにあたり、「医療機器販売・貸与管理者基礎講習」の受講や医療機器販売の実務経験が求められます。管理者として資格を得た後も年一回は「医療機器販売・貸与管理者及び修理責任技術者継続的研修」の受講が必要となります。
管理者の役割と必要な資格
医療機器は、身体への負担の大きさや安全性などによって区分されます。特に高度管理医療機器、特定保守管理医療機器、特定管理医療機器(管理医療機器)の販売に携わる業者は、営業所ごとに管理者を設置することが義務づけられています。また資格要件、従事業務経験などはそれぞれのケースによって異なるため注意が必要です。
<高度管理医療機器>
- 販売許可、管理者の設置が必要
- 管理者の区分が3つに分かれ、基礎講習の受講が必要。機器の種類によって、管理者になるために必要な業務経験は異なる(1~3年)
<特定保守管理医療機器>
- 販売許可、管理者の設置が必要。
- 基礎講習の受講が必要。高度管理医療機器の区分のうち、高度管理医療機器等(コンタクトレンズプログラムを除く)の販売業務3年。
<特定管理医療機器>
- 管理者の設置が必要。販売は届出。
- 管理者の区分が4つに分かれる。基礎講習の受講が必要。機器の種類によって、管理者になるために必要な業務経験は異なる(1~3年)
なお、営業所管理者については、医療機器の区分に関わらず、以下の3つのうちのいずれかを満たすことが要件となります。
医療機器販売業の許可と申請
届出している区分 | 医療機器の種類 | 許可/届出 | 申請先/届出先 | 管理者の配置 | |
高度管理医療機器等 | 高度管理医療機器等 | 許可必要 | 営業所の所在地を管轄する保健福祉事務所または保健福祉事務所センター | 義務 | |
プログラム高度管理医療機器 | |||||
管理医療機器 | 特定管理医療機器 | 医療機関向け管理医療機器 | 届出必要 | 営業所の所在地を管轄する保健福祉事務所または保健福祉事務所センター | 義務 |
補聴器 | |||||
家庭用電気治療器 | |||||
プログラム特定管理医療機器 | |||||
家庭用管理医療機器 | 不要 | ||||
一般医療機器 | 不要 |
高度管理医療機器等を申請する際の流れは次の通りです。
1. 許可申請書の提出
申請に必要な書類を揃え、事業所の所在地を管轄する保健所(保健福祉事務所)に提出します。
2. 薬事監視員による立ち入り検査
薬事監視員が事業所に派遣され、構造設備などが基準を満たしているかどうかの立ち入り検査を実施。医療機器の保管場所や設備、品質管理体制などがチェックされます。
3.許可
立ち入り検査の結果、許可要件を満たしていると判断されれば、製造販売の許可が下ります。
4.許可証の交付
許可証の交付を受けた日から、高度管理医療機器等の製造販売、貸与などが可能になります。
医療機器の分類で異なる許可や届出
クラス分類 | 分類名 | リスク分類 | 承認・認証 | |
---|---|---|---|---|
Ⅰ | 一般医療機器 ex.)メス・ピンセット等の鋼製小物類、救急判創膏、X線フィルム、副木、歯科用ワックス |
特定保守管理医療機器 左のクラス分類に関わらず、保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とする医療機器として厚生労働大臣により指定されているもの ex.)X線撮影装置、MRI装置、超音波画像診断装置など |
不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いと考えられるもの | 承認等不要 |
Ⅱ | 管理医療機器 ex.)家庭用電気治療器、家庭用電気マッサージ器、歯科用金属、補聴器(骨固定型はクラスⅢ) |
不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが比較的低いと考えられるもの | あらかじめ厚生労働大臣の登録を受けた民間の第三者認証機関による認証 | |
Ⅲ | 高度管理医療機器 ex.)透析器、人工骨、人工呼吸器、輸液ポンプ、植込型ペースメーカ、人工心臓弁、コンタクトレンズ、除細動器 |
不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高いと考えられるもの | 大臣承認(総合機構で審査) | |
Ⅳ | 患者への侵襲度が高く、不具合が生じた場合、生命の危険に直結するおそれがあるもの |
医療機器は、不具合が起きた際の体への影響の大きさ・リスクによって4つに分類されます。体への影響が大きい医療機器ほど、販売業・貸与業に必要な許可や届出などの手続きがより厳しく定められているのです。ここからは医療機器の4つのグループ区分とそれぞれ義務付けられる手続きを挙げてご紹介します。
・クラスI(一般医療機器)
(例)メス・ピンセット等の鋼製小物類、歯科用ワックス
不具合が生じても、体への影響が軽微だと判断される医療機器。販売・貸与業の許可・届出は不要(特定保守管理医療機器に指定されている場合は、許可が必要)。
・クラスII(管理医療機器)
(例)家庭用電気治療器、家庭用電気マッサージ器
体への影響が比較的低いと考えられる医療機器。認証基準のある医療機器を製造販売するためには、第三者認証機関による審査を受ける必要がある。営業所ごとに届出を行う(一部例外もあり)。
・クラスIII(高度管理医療機器)
(例)透析器、人工呼吸器
体への影響・リスクが比較的高いと考えられる医療機器。厚生労働大臣の承認が求められる(総合機構で審査)。営業所ごとに許可が必要。
・クラスIV(高度管理医療機器)
(例)植込型ペースメーカー、人工心臓弁、不具合があると、命に関わる可能性が高いと考えられる医療機器。厚生労働大臣の承認が求められる(総合機構で審査)。営業所ごとに許可が必要。
この他、クラス分類に関わらず、専門的な保守管理を行う必要のある医療機器が「特定保守管理医療機器」として別途定められています。X線撮影装置やMRI装置などが該当します。特定保守管理医療機器を販売または貸与する場合は、営業所ごとに高度管理医療機器販売(貸与)業の許可申請が必要になります。一般医療機器や管理医療機器であっても同様です。
医療機器販売製造業と医療機器販売業の違い
医療機器販売業 | 医療機器製造販売業 |
---|---|
市場に出荷された医療機器製品を販売する業者 | 市場に出荷し、市場にある医療機器製品に対して最終責任を負う業者 |
医療機器製造販売業から仕入れた医療機器、もしくは国内外のユーザーから買取・輸入した中古医療機器を、病院などのエンドユーザーへ販売できるが、医療機器の製造はできない | 自社または他社で製造、もしくは海外から輸入した医療機器を国内市場へ出荷 医療機器販売業・貸与業への販売はできるが、エンドユーザーへの販売はできない |
新たな医療機器を市場へ出荷することはできない | 新たな医療機器を市場へ出荷するために必要な承認・認証へ向けた各種手続きを行う役割も負う |
営業所ごとに管轄地域の保健所へ取り扱う医療機器のクラス分類に応じた届出・手続きが必要 ※中古医療機器を販売するには管轄警察署による古物商許可、自社で医療機器を修理・販売するための都道府県庁による医療用具専業修理業許可も必要 |
製造販売する医療機器のクラス分類に応じて、管轄都道府県による第一種医療機器製造販売業、第二種医療機器製造販売業、第三種医療機器製造販売業の許可が必要 |
「医療機器製造販売業」「医療機器販売業」はどちらも医療機器関連の業務ですが、それぞれ異なる特徴や役割、責任を担っています。
「医療機器製造販売業」は市場への流通にかかわる部分をトータルで担う業者です。医療機器の品質と安全性を確保し、問題発生時には必要な措置を講じるなど機器の最終責任までを担います。新たな医療機器を市場に出荷する際の申請や審査手続きも行います。また実際に製造をするのは医療機器製造業者です。また医療機器を販売業・貸与業者に販売はしますが、病院などのエンドユーザーに直接販売することはできません。
もう一方の「医療機器販売業」は、病院や診療所などのエンドユーザーをはじめ、市場にリリースされた医療機器を販売する業者をいいます。取り扱う医療機器のクラス(リスクの程度)によって、必要な許可や届出などの手続きを経て販売を行います。既存の医療機器を医療機関に販売することがメインのため、開発した製品を市場に出荷することは認められていません。なお中古医療機器の販売にあたっては、管轄警察署による古物商許可や都道府県庁による医療機器修理業の許可も求められます。
医療機器販売業の重要なルールと遵守事項
令和3年8月1日、医療機器販売業者に向けた「法令遵守体制の整備」が義務付けられました。近年、業者によるルール(薬機法)違反などの事例が発生したこともあり、国民の生命・健康を守るためのより厳格な法令遵守体制の構築ニーズが高まった点も影響しています。
“許可等業者に対し、薬事に関する法令を遵守するための体制を構築することを義務付ける”ことを目的とし、次のポイントがまとめられています。
医薬品医療機器等法に基づく基準
医薬品医療機器等法(薬機法)は薬品、医療機器、化粧品、再生医療等製品などの品質、有効性、安全性を保つための法律です。医療機器や薬品などの使用により、副作用や感染症などの健康被害が起こらないよう、未然に防ぐためのルールを定めています。
例えば、新しい医薬品や医療機器を販売する前に、国が審査を行い、品質、有効性、安全性を確認すること、製造・品質管理における基準の遵守、販売後の安全対策まで「健康を守るため」のさまざまな視点が網羅されているのです。当然ながら、医療機器の販売や貸与も、薬機法の規制対象となります。なお2014年(平成26年)の法改正を機に、医薬品、医療機器等の安全対策強化や医療機器に関する規制内容の変更などが盛り込まれています。
医療機器販売業の設備と営業所要件
医療機器は、人の命を預かる重要な役割を担っています。その品質を維持するための管理体制は、医療現場において最優先事項の一つと言えるでしょう。販売や貸与を行う場所にも、次の3点を中心にしっかりとした基準が設けられています。
加えて医療機器販売業者には、定期的かつ計画的な自己点検の実施が定められています。企業が自ら品質管理体制をチェックし、問題を改善することでより安全な医療機器の提供が可能になるからです。
東京都健康安全研究センターでは、医療機器販売業者が遵守すべき事項を網羅的にまとめた業者向けの自己点検チェックリストを公開しています。信頼できる業者を探す場合の参考にしてください。
医療機器の購入は実績と信頼のある販売業者へ
医療機器は健康に直結するもの。重要なのは、信頼と実績に基づいて医療機器販売業者を選ぶことです。医療機器自体の品質はもちろんのこと、導入後のメンテナンスやサポート体制を含め、トータルで判断することをおすすめします。
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