2028年には264億円規模となる医療AI市場で日本は勝ち残れるのか!?

更新日:2025年02月25日

医療の世界でAIの活用が広がりつつあり、AIを搭載した医療機器の開発競争が世界中で本格化しています。国内においても大手医療機器メーカーからスタートアップまでさまざまな企業が相次いで新製品を発表するなど、市場は活況を呈しています。このようなAIの活用により、診断精度の向上や医療従事者の負担軽減、そして患者のQOL(生活の質)の向上にも寄与することが期待されています。そこで今回は国内外の最新動向を踏まえながら、医療AIがもたらす新たな可能性を多角的に分析し、医療機器業界の今後の展望を詳しく解説します。

AI医療機器の市場規模拡大と現状の競争環境について

医療分野におけるAIの活用は、世界的に見ても近年、急速な広がりを見せています。「医療AI」や「AI医療」といったキーワードが、メディアで取り上げられる機会が増していることからも、社会的な関心が高まっていることがうかがえます。

しかし、こうした世界的な動きを広い視野で捉えたとき、日本企業はどのような位置にいるのでしょうか。AI医療機器の開発を国家戦略として位置づけ、積極的に推進している国もある中で、日本はやや出遅れているという印象を持つ方も少なくないかもしれません。まずは医療AI市場の世界的な潮流と日本企業が抱える事情に触れ、今後の市場動向についてもお伝えします。

2028年の市場予測:264億円市場への道筋

世界的に医療分野へのAI導入が加速する中、日本でも診断・診療支援AIシステムは、医療現場のニーズに応える形で導入が広がり、多くの医療機関で使われるようになってきました。背景として、診療報酬でAI活用が評価されるようになったことが挙げられます。AIによる画像診断支援や一部の内視鏡検査でのAI活用などが加算対象になったことで、医療機関にとってはAI導入が経済的なメリットに繋がるようになりました。これは、AI活用の意義が公的に認められたことの証と言えるでしょう。

その結果、大規模病院だけでなく、クリニックや健診施設、遠隔読影サービスなど、さまざまな場所での導入が進んでいます。医師の負担軽減、診断の質向上、医療の効率化に貢献するAIへの期待は大きく、株式会社矢野経済研究所の調査によると、2028年度には診断・診療支援AIシステムの市場規模は264億円に拡大すると予測されています。

AI医療機器のグローバル競争における日本の立ち位置

世界の医療AI市場が拡大する中、日本はAI医療機器の開発・導入において、海外主要国に後れをとっているのが現状です。こうした状況を変えるべく、政府も積極的に動き出しました。2023年には「AI戦略会議」を設置し、新たなAI戦略の策定に着手し、国家戦略としてのAI戦略策定に乗り出しました。

AI医療機器を取り巻く国内外の市場動向、技術開発の最前線、規制のあり方、さらには倫理的課題に至るまで、さまざまな調査・分析を進めています。AI開発を後押しするため、国は企業を積極的にサポートしています。新しいAI医療機器を開発する企業への助成金制度を設けているほか、AIの特性に合わせた迅速な審査を実施。また、AIの学習に必要な医療データを円滑に利用できるよう、明確なルール作りにも取り組んでいます。

M&Aに勝機を見出そうとする日本企業

医療機器の開発には、多額の投資と長い年月が必要です。安全性と有効性を厳しくするうえで、大規模な臨床試験も欠かせません。そのためこれまでは、潤沢な資金力と研究開発力を持つ大手企業が、安定した収益源を求めて医療機器事業に参入するケースが多く見られました。しかし、日本の医療機器業界では近年、事業再編の動きが活発化しています。

特に目立つのが、カメラ関連メーカーやコピー機メーカーなど異業種からの参入によるM&Aです。これらの企業は、医療機器事業を新たな収益源として期待し、既存技術の応用やM&Aによる事業規模の拡大によって医療機器分野での存在感を急速に高めています。電機大手が本業との相乗効果の薄さから医療機器事業を売却・撤退する中、M&Aは日本企業が規模を拡大し、グローバル競争を勝ち抜くための重要な戦略となっています。中でも富士フイルムは買収した企業とのシナジー効果を最大限に発揮し、高い成長を遂げています。

なぜ、日本は「AI医療機器後進国」と呼ばれるのか

成長が期待される医療機器

AI技術の進化は、医療のあり方を大きく変えようとしています。上の図(成長が期待される医療機器)からもわかるとおり、プログラム医療機器(SaMD)は、世界市場規模が大きく、かつ成長率も高い分野として注目されています。この中には、AIを活用した医療機器も含まれており、AI医療機器の世界的な潮流を考える上でも重要な指標とも言えるのです。

このように世界各国がAI医療機器の開発・導入にしのぎを削る中、日本はその流れに乗り遅れているとの指摘もあります。なぜ、AI医療機器の開発・導入において世界から遅れをとってしまったのでしょうか。その背景にある要因を多角的に探っていきます。

AI医療機器の保険適用範囲というハードル

日本の医療は、国民皆保険制度によって、誰もが必要な時に医療サービスを受けられる、世界でも有数の充実した体制を誇ります。しかし、この手厚い制度が、医療データを分析し、診断や治療に役立てる技術、特にAI医療機器の普及においては、ハードルとなっている側面も否定できません。というのも、AIを活用した医療技術は効果や費用対照の評価の難しさから、保険適用が見送られることがほとんどだったからです。

2022年度の診療報酬改定で、ようやくAIによる画像診断支援の一部が保険適用となりましたが、対象範囲はまだ限定的です。AI医療機器が真価を発揮し、医療の質向上に貢献するためには、より幅広い疾患・検査での保険適用が不可欠です。今後の診療報酬改定で、AI医療機器に対する適切な評価と、適用範囲の拡大が期待されます。

AI医療活用のガイドラインと薬事規制のあり方

AI医療機器の普及を考える上で避けて通れないのが、倫理的な問題と法規制の壁です。日本では医師法17条は医師以外の医師が行う医療行為を禁じています。そこでAIによる診断がこの「医師が行う医療行為」にあたるのかどうか、 また誤診時の責任の所在について不明確なままでした。

しかし厚労省は「AIは医師の診断支援であり、最終判断と責任は医師にある」と明示。AI自体に責任はなく、道具と同様に医師が使用責任を負うと明確化しています。AI医療機器の承認に関しては、 薬機法の厳格な審査基準は承認遅延の一因でしたが、AIの特性を踏まえた迅速な承認体制へ移行中です。厚労省は医療機関の体制整備等、医療法上の課題にも対応しつつ、法改正を通じてAI医療機器の実用化を推進しています。

PMDA承認事例から見る我が国の強みとは

PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)は、日本の医薬品や医療機器の承認審査、市販後の安全対策、健康被害救済を行う公的機関です。新しい薬や医療機器を世に出すためには、PMDAの厳格な審査をクリアし、その安全性と効果を証明しなければなりません。

また日本の医療制度や薬機法などの法律、そして「人命に関わることだから間違いがあってはいけない」という日本人の考え方は、AI医療機器の開発にも影響を与えています。その結果、海外に比べて開発に時間を要する場合もしばしば見られます。ただ見方を変えると、安全性と品質を何よりも大切にする日本の「ものづくり」のこだわりとも言えるでしょう。

▼米国等に先駆けて日本で開発or承認された医療機器例

機器名称 一般的名称 製造販売業者 承認年月日
RETISSAメディカル レーザ網膜走査型眼鏡 株式会社QDレーザ 2020年1月28日
①BNCT治療システムNeuCure
②BNCT線量計算プログラムNeuCureドーズエンジン
①ホウ素中性子捕捉療法用中性子照射装置
②ホウ素中性子捕捉療法用治療計画プログラム
住友重機械工業株式会社 2020年3月11日
耳管ピン 耳管用補綴材 富士システムズ株式会社 2020年5月29日
CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー 禁煙治療補助システム 株式会社CureApp 2020年8月21日
セルーションセルセラピーキットSUI 脂肪組織分離キット サイトリ・セラピューティクス株式会社 2022年2月8日
nodoca(ノドカ) 内視鏡用テレスコープ及び内視鏡用疾患特徴所見検出支援プログラム アイリス株式会社 2022年4月26日
CureApp HT 高血圧治療補助アプリ 高血圧症治療補助プログラム 株式会社CureApp 2022年4月26日
全静脈麻酔支援シリンジポンプ制御ソフトウェア 全身麻酔用医薬品投与制御プログラム 日本光電工業株式会社 2022年9月29日

一方で、こうした厳しい基準がある中でも、世界に先駆けて、あるいは米国と同時期にPMDAの承認を取得したAI医療機器も存在します(上記表参照)。これは、日本の高い技術力と、厳格な審査をクリアできる開発力の証でもあります。

AI医療機器の応用分野とヘルスケア産業への影響

AI医療機器の活用は、もはや病院の中だけにとどまりません。診断や治療をサポートする従来の役割を超え、人々の健康を支える、より幅広い分野へとその可能性を広げています。例えば、AIによる画像診断は、医師の目だけでは見落としがちな微細な病変を早期に発見し、がんなどの早期診断・治療に貢献します。

また、AIを活用した手術支援ロボットは、より精密で安全な手術を可能にし、患者さんの負担軽減に繋がります。さらに、創薬分野でもAIの活用が進んでいます。膨大なデータから新薬候補物質を効率的に探索したり、個人の遺伝情報に基づいた最適な治療法を選択したりすることも、AIの得意とするところです。AI医療機器は、医療の質を向上させるだけでなく、医薬品開発の効率化、さらには健康増進、予防医療、介護といったヘルスケア産業全体に革新をもたらす可能性を秘めているのです。

注目を集める「会話型 認知症診断支援AIプログラム」

近年、医療AIの分野において「会話型認知症診断支援AIプログラム」が注目を集めています。このプログラムは、AIとの自然な対話を通じて、認知機能の状態を評価するという新しいアプローチです。言葉の内容だけでなく、声の調子や応答の速さなど、会話のさまざまな側面からAIが分析を行い、認知症の早期発見を支援します。

これまでの認知機能検査は、専門医による問診や心理検査が中心であり、時間や場所、また評価する人間によって結果が変わってしまう点が課題でもありました。「会話型認知症診断支援AIプログラム」を使えば、こうした課題を解決できるかもしれません。AIが相手なので、気軽に検査を受けられ、より客観的な結果が期待できるため、医療現場の負担を減らすことにもつながると考えられます。

AIマッチングシステムで最適な医療機関を選択

医療の質を高め、患者がよりスムーズに受診できるような新たなシステムとして、医療AIを活用した取り組みが進んでいます。例えば順天堂大学が研究開発に取り組む「PFM AIマッチングシステム」では、患者一人ひとりの情報(症状、居住地、希望する診療科など)と、病院側の情報(得意な診療分野、混雑具合、設備の有無など)をAIが詳細に分析します。その上で「あなたに最も適した病院はここです」と提案を行う、いわば病院選びのコンシェルジュのような役割を果たすのです。

このAIマッチングシステムが実用化されれば、患者はより適切な医療機関を簡単に選べるようになり、医療機関側も専門性を活かした診療を提供しやすくなるでしょう。結果として、医療全体の効率化、質の向上が期待されています。

人手不足解消という観点から見る介護福祉現場のAI活用

医療AIへの期待は、診断や治療のサポートだけにとどまりません。深刻化する人手不足という課題を抱える介護福祉の現場においても、AI活用は重要な解決策の一つとして関心を集めています。

例えば、AIを活用した見守りシステムは高齢者の安全確保に貢献。介護記録の自動化は事務作業の負担を軽減する役割を担います。さらに介護ロボットは身体介護をサポートし、介護者の負担を和らげるメリットをもたらします。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、2040年には高齢者人口がピークを迎える中で、介護需要は急増すると予測されています。AIは、こうした介護現場の人手不足解消に「不可欠な存在」となりつつあるのです

米国デジタルヘルスの最前線では生成AIに脚光

世界最大の医療機器市場であるアメリカでは、「生成AI」を活用したスタートアップ企業が続々と誕生し、大手製薬会社や医療機関との連携も進んでいます。「生成AI」は文章、画像、さらには音声まで、あらゆるコンテンツを自ら生み出す技術として期待されており、医療の現場にも大きな影響を及ぼすものと考えられています。

実際に、米国では700件以上のAI搭載医療機器がFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得ており、特に放射線科や循環器科での導入が進んでいます。AIは、スピーディーな新薬開発、高精度な画像診断、診療記録作成の自動化など、多岐にわたる応用が可能です。医療従事者の負担を軽減しつつ、医療の質を向上させる切り札として、進化を続けていくでしょう。

中古医療機器に関するご相談はグリーンメディカルへ

医療技術の進歩は目覚ましく、医療機器も日々進化を続けています。最新の医療機器の導入は、医療の質向上に欠かせない一方で、導入・運用コストは医療機関経営における大きな課題でもあります。 コストを抑えつつ、必要な医療機器を導入するための有効な選択肢となるのが中古医療機器の活用です。新品と比べて大幅に費用を抑えながら、必要な機器を導入できます。

グリーンメディカルでは、中古医療機器に関する豊富な知識と経験を持つ専門スタッフが、お客様のニーズを丁寧にヒアリング。ご予算や必要な機能、設置環境などを総合的に考慮し、最適な機器をご提案いたします。機器の選定から導入・アフターフォローまで、ワンストップでサポートいたします。安心してご相談ください。

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まとめ:AI技術の導入で再編成化が進む医療機器業界

医療AIは、診断・治療支援、創薬、介護など医療の幅広い分野で活用され、その効果を発揮しはじめています。会話型認知症診断支援AIや、患者と治療法を結びつけるAIマッチングシステムなどの登場は、医療の質と効率に大きく貢献しています。そしてアメリカでトレンドとなっている生成AIは、診断・治療の方法を大きく変える可能性をも秘めているのです。医療AIは、今後ますます進化し、私たちの健康と生活を支える基盤技術となるでしょう。今後医療AIはどう発展していくのか、ますます目が離せなくなりそうです。

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